大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(ネ)660号 判決

本件土地がもと斎藤光三郎の所有に属していたこと、被控訴人が昭和二十二年十二月十五日右土地を斎藤光三郎から買受け、同月十八日その所有権取得登記を経由したことは当事者間に争がなく、証拠によれば、控訴人は昭和九年頃斎藤光三郎から本件土地を普通建物所有の目的を以て賃借し、その地上に住宅四棟を所有していたことを認めることができる。しかるに昭和二十年三月頃右建物は防空法にもとずく東京都の強制疎開事業執行のため除却せられたことは当事者間に争のないところである。よつて右強制疎開の実施により控訴人が右土地につき有していた借地権は消滅したか否かにつき案ずるに、右強制疎開が東京都の第六次強制疎開事業として実施せられたものであることは当事者間に争がない。而して一部証拠を綜合すれば、当審においても原審と同様に本件土地を目的とする控訴人の借地権は右強制疎開の実施により消滅したものと認める。即ち、東京都は戦時中防空法の規定にもとずき強制疎開を実施するに当り、第五次のものまでは除却建物とその敷地借地権とを各別に評価補償して来たが、その後戦局が緊迫するに伴い、強制疎開事業を急速に完了する必要に迫られ、これと同時に事務の簡素化を図らんがために、強制疎開の補償については、家屋税法により家屋台帳に登録された疎開建物の賃貸価格に一定の倍率を乗じて算出した金額をその補償額と定め、その内にその敷地の借地権の補償をも含むものとして交付することに改めたこと、従て、右借地権につき別箇に補償額を定めなかつたけれども、建物の賃貸価格中に敷地の借地条件をも反映するものとして右補償額中には右建物の補償の外に、その敷地の借地権の補償をも包含してこれを定めたものであること、その金額は従来の建物だけの補償額に比し上廻つていたこと、本件においても、東京都から控訴人に対する建物強制疎開の補償額として、その敷地である本件土地の借地権の補償を含めて金一万千五百五十円と定められ、その後、遅くとも翌年春頃までに控訴人の妻において控訴人に代り異議なくこれを受領したこと、次で東京都においては直接斎藤光三郎から右土地を賃借するに至つたことを認めることができる。而して特別の事情がない限り控訴人は東京都から右補償金を受領するに当り右事情を了承していたものと認むべきである。(中略)以上の事実によれば、東京都は、防空法の規定にもとずき、本件土地の借地権につき補償をなした上、控訴人からこれを買収取得したものであつて、控訴人はこれによりすでに右借地権を失つたものと解するのが相当である。

(牛山 岡崎 渡辺)

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